先日、6月14日(金)、ある地方の自治体さんとのご縁から、直売所の関係さんに向けて講演の機会をいただきました。 「魅力ある直販所(直売所)づくり」というテーマをいただき、約1時間の講義。その後、個別相談会という形で約90分、皆さんとご一緒いたしました。
農産物直売所の関係者さんが対象でしたが、小さなお店が生き残るために今後必要なこと。という意味で、小売・サービス業にも共通する話ですので、こちらで共有いたしますね。
一極集中の直売所の現状
地域によって違うと思いますが、直売所の『一極集中化』が進んでいると感じています。ではいったい、何が一極集中しているのか?
ある特定のお店に、出荷物が集中。商品である農産物が大規模なお店に集まり、他方、規模の小さいお店では野菜が集まりにくい。いえ、不足する事態が起きていると感じています。これは、生産者側の立場になれば、理解できる話です。
生産者側からすれば、『売れる』お店に商品を出荷したい。これは当然の話ですよね。仮に近所に直売所のお店があったとしても、そこにお客さまが集まって来なければ、せっかくの商品が売れ残ってしまう…。来店されるお客さまが少なければ、売れ残る可能性が高くなる。
さらに言うと、お客さまの集まる大規模な直売所では、小規模のお店に比べて、1~2割価格が高くても売れる。そのような傾向を肌で感じています。
小規模な直売所が生き残る道
少し煽るような極端な言い方ですが、小規模の直売所が存続していくには、大規模なお店とは違う戦略が必要になるのではないでしょうか。
直売所に限らず、小売・サービスの業界では、個人や家族経営のお店が大手と同じ土俵で勝負しても、勝ち目は薄いのと同じ話です。 では、どういった勝ち筋を見つければいいのか? 個人的には、ソフトに突破口があると考えています。「ソフトとハード」よく言いますよね?…コンタクトではないですよ、念のため。。
- ソフト:人材(意識)、技術、情報など
- ハード:施設、設備、機器など
施設や設備を充実させるには、コストがかかります。小規模のお店は負担のかかる話です。そこで勝負するよりも、言ってみれば、『知恵』をかける。お金をかけずに、創意工夫で勝負するのです。
魅力的な直売所づくり、3つのアプローチ
先日の講演では、「魅力的な直売所づくり、3つのアプローチ」というテーマで、お店で実践できる具体策をご提案いたしました。
- 魅せるアプローチ
- 伝えるアプローチ
- コミュニケーションアプローチ
「こんな事をやればいいよ」言葉でお伝えするだけでなく、実際に講師である私(臼井)自身が、産直店で実践してきたこと。あるいは、ご縁をいただく直売所や道の駅で実践していただき、うまくいっていたことを事例でご紹介。
言葉や理論だけでなく、明日から実践できる具体的なカタチで、皆さんと共有いたしました。ここで詳細をお伝えすると、今から1時間話し続けなければいけなくなりますので、ザっと概要だけで許してください(笑)
1:魅せるアプローチ
魅せる、という言葉のとおり、視覚的に訴える施策です。一番手っ取り早いのは、売り場の工夫です。
多くの直売所さんにお伺いするなか、売り場や陳列が平面的なお店が多い気がします。平台の上に、お野菜を並べられている。 メリハリがないというか、ボリューム感がちょっと足りない。空き段ボールでもいいので活用して、ひな壇をつくる。ザルがあれば、そこに野菜を並べる。それだけでもメリハリが生まれ、売り場に活気が生まれ、商品がより魅力的に感じられます。
2:伝えるアプローチ
- じゃがいも
- 男爵のじゃがいも
- 今年90才になる、高知県でじゃがいもをつくる、田中みわさんが作った男爵
上記3つのじゃがいもで、あなたが興味を感じるのはどれですか?(いきなりの質問でスミマセン。。)
答えは様々だと思います。こちらの狙いとしては、「3番です!」と答えて欲しいのですが、「田中みわさんって、誰やねん?」という方もいらっしゃるかもしれません。
ここでお伝えしたいのは、商品をそのまま売るな。商品にまつわる情報や背景など、何かしらメッセージを伝えよう。そうすることで、商品に対する思い入れや親近感、特別感が生まれやすくなる。
一方、何も伝えず商品単体で売ろうとすると、お客さまが得る情報は価格だけになる。イコール、他の商品と価格で比較される、価格競争に巻き込まれますよ、という話です。
3:コミュニケーションアプローチ
直売所の役割ってなにか?生産者がつくったお野菜を売ること…だけじゃないはずです。
- 「生産者」⇔「お店」⇔「お客さま」
いわば、生産者とお客さまの間にはいって、パイプ役になる存在。先ほどの話のとおり、生産者から商品を預かり、お客さまに購入いただく。これも一つの役目だし、あとは、ここ重要なんですが、届けるのは商品だけじゃない。パイプ役となり、情報を双方に届けるのも重要な役目になってきます。
お客さまからいただいた商品に対する「声・ご感想」を生産者に届ける。また逆もしかり。生産者の商品に対する想いを、お客さまに届ける。これも非常に大切なお店の役割じゃないでしょうか。
生産者⇔お客さまのコミュニケーションを、お店を通じて円滑にする。盛り上げる。その結果、「このお店、何か違う」「また行きたい」「お友だちにも教えたい」お客さまにとって、特別なお店になるのではないでしょうか。
まとめ~出荷したくなるお店を目指そう
ただ野菜を売るだけでは、もうこれから直売所は厳しくなりますよ。県外客もやって来るような大規模なお店に出荷物は集中。生産者はシビアなので、売れるお店に出荷する。
ただでさえ、生産者の高齢化で出荷者不足で困っている直売所が多いなか、ますます販売商品が足りない。お店の存続さえ難しい事態を招きます。
生産者が「出荷したくなる」お店。お客さまが「買いに行きたくなる」お店の実現を目指す。そのためにも、ソフト・ハードのソフトに注力しよう。知恵を出していこう。そんな話を先日の講演で共有させていただきました。
「背中を押してもらった気分です」「もう、こりゃ帰ったらやらないと」「現場の話でエネルギーもらえました」このような有難いお声もいただき、こちらもエネルギーをいただけました。これからが楽しみです。