売場は、商品を「プレゼンテーションする場」。お客さまに商品を披露するステージです。
主役は、あなたが売る商品。そして、その演出家があなたです。
「いかに商品を魅力的にお客さまへ伝えられるのか?」
こんな視点で売場をつくってみる。すると、その商品の新たな価値を生み出せます。
というわけで、今日のテーマは『売場づくり』です。中でも特に、「陳列ディスプレイ」について考えます。
面白味のない売場
例えば、あなたが野菜売場の担当者だとします。今月は「トマト」に力を入れて売っていきたいと考えた。
「さぁ、どうやって売っていこう…?」
「売場づくりはどうしよう…?」
思案します。
通常ならば…野菜売場の一角にトマトコーナーをつくる。あるいは既にコーナーがあるなら、そこに商品を陳列。これが妥当なやり方じゃないでしょうか。
- いろんな種類のトマト一緒に陳列
- 見比べてもらう
一般的なやり方だと思います。ただこれだとあまりにも一般的すぎて面白くない。
「いつもと違った売り方をしたい」
そう思ったときに、どうやって売るか?
トマトの「販売アイデア」
例えば、
- 赤い野菜を集めて、売場をつくる
- 野菜に限らず、赤い商品を集める
- トマトをつかう料理メニューの提案(他の野菜や材料と一緒に陳列)
- 単価でくくる(同じ価格の野菜を集めて、●●円均一など)
- 生産者でくくる(トマトに限らず、その生産者がつくった野菜を集める)
- サラダにつかう野菜をまとめて売る
- 色づかいを重視して、彩りのきれいな野菜を集める
- トマトコンテストを開催(売上・甘さ・希少度などのカテゴリーでランク付け)
などなど、ザっと考えただけで、いろんな売り方アイデアが出てきます。
さらに極端にいえば、トマトを「お菓子売場」で売るのも1つの方法です。
トマトをお菓子売場で売る?
フルーツトマトのような甘い品種を、お菓子やデザートとして提案してみる。
なにもトマトだからといって、野菜売場で売らなきゃいけない、そんな理由はないわけだから。
(部門間で担当者が違う、ある程度の規模のお店では却下される可能性大だけど…)
冒頭の「商品を演出する」視点でいえば、トマトをデザートとして売るのも1つの演出です。
トマトを野菜の1つとして売っていたら今までと価値は変わらない。
だけど、「デザート」として売ったら新しい価値や価格付けができるかもしれません。
新しい価値を生み出そうと思ったら、従来の「括り」から逸脱することも1つの方法ではないでしょうか。
価格関係なく売れた売場
私事で恐縮なんですが、30歳の頃働いていた産直店でこんな経験をしました。
自分がチカラを入れて売りたい生産者さんがいました。しかし、その方の野菜は他より1.5倍~2倍高かった。なので、普通の売り方をしていては、なかなか売れにくかったのです。
例えば、イメージはこんな感じです。
Aさんという僕のお気に入りの生産者が「キュウリ」をお店に送ってきた。それをそのまま「キュウリ売場」に並べる。それでは、売れなかったのです。
どうしてか?
他の生産者のキュウリより高いから。価格で比較されて売れなかったのです。
そこで対応した1つの方法は、売場に『Aさんコーナー』をつくることでした。Aさんがつくった野菜だったら、キュウリに限らず、トマト、玉ねぎ、じゃがいも…まとめて並べたのです。
そしたら、あっという間に売れました。
多少高くても、値段関係なしに売れるようになりました。Aさんに限らず他の生産者さんに試しても、ほぼ同様の結果が得られたのです。
商品を魅力的に演出するチカラ
私たちは演出家でもありませんし、そんな経験もありません。だけど商品を売るときに「演出」する意識を持っていると、アイデアが生まれやすいです。
先ほどご紹介した、お気に入りの生産者Aさんのコーナーをつくった売り方。あれも言ってみれば、『Aさん特集』の演出です。
お店のなかに、Aさんをクローズアップした売場をつくったわけです。いろんな視点からAさんの野菜に焦点を当てて伝えた。結果、それがお客さまには新たな価値として届き、売れたのではないでしょうか。
他店と同じ、従来どおりの売り方だと、価格など既存の価値でしか伝わりません。(そして安い商品が売れやすくなる)
新たな価値を生み出すアイデアが必要です。
そのためには、従来の「括り」から逸脱することも1つの方法だと考えています。そしてその時に1つのヒントになるのが、「演出」するという視点。
売場は、商品を「プレゼンテーションする」場所。お客さまに商品を披露するステージです。
あなたは、その演出家。
商品を主役に考えて、
「いかに商品を魅力的にお客さまへ伝えられるのか?」
こんな視点で売場をつくる。すると、その商品の新たな価値を生み出せるのかもしれません。