研修後の質問から感じた「現場が動き始める瞬間」

先日、高知県で直販所関係者を対象とした「売り場づくり講習会」の講師を務めました。

今回のテーマは、

生産者とお店が一緒につくる「選ばれる直販所」

※一般には「直売所」と呼ばれることもありますが、高知県では「直販所」という表現が使われています。本記事では研修名称に合わせ、「直販所」と表記しています。

売り場づくりや商品の魅せ方、袋詰め・タグ・POP、旬を来店理由に変える考え方などを、「魅せる・伝える・集める」という3つの視点からお伝えしました。

ただ、今回特に印象に残ったのは、研修そのものが終わった後のことでした。
二人の参加者の方が名刺交換に来てくださり、それぞれご自身の現場について具体的な質問をしてくださいました。

直販所の売り場づくりについてスライドを使って講義する様子
実際の売り場事例を交えながら、「選ばれる直販所」をつくるための考え方をお伝えしました

研修後、参加者からいただいた質問

お一人は、研修の中で紹介した「一等地売り場」についてのご相談でした。

一等地売り場とは、お客さまの目や足が集まりやすい場所のこと。
入口や曲がり角、レジ前など、お店によって場所は異なります。

研修中、「自分のお店なら、どこを一等地売り場にしますか?」と問いかけたところ、その方は、
「入口を入ってすぐにテーブルがあるけれど、うまく使えていない。もったいないと感じていた」と話してくださいました。

そして研修終了後、これからの季節に地元でつくられる手作りこんにゃくを、おすすめ商品としてしっかり売っていきたいとのこと。
ただし、こんにゃくは冷蔵商品です。

「冷蔵ケースを入口の一等地へ移した方がいいでしょうか」

というご相談をいただきました。

「自分の店なら、どうするか」を考え始める

冷蔵ケースそのものを動かすのは、現実的には難しいこともあります。
そこで、

入口の一等地で「今のおすすめは手作りこんにゃく」とまず気づいてもらう。
そこから、実際に商品がある冷蔵ケースへ案内する。

そんな方法もあるのでは、とお話ししました。

このやり取りをしながら、私自身も一つ気づかされました。
一等地売り場は、必ずしも商品そのものを置く場所でなくてもいい。

お客さまに気づいてもらい、商品まで導く場所。

そんな使い方もできます。

研修で聞いた考え方を、そのまま受け取るのではなく、
「では、自分の店ならどうするか」まで考えてくださっていたことが、何よりうれしく感じました。

「主体的に働いてもらうには?」

もうお一人は、店長代理をされている方でした。
当社のサイトをスマートフォンで見せながら、「スタッフに主体的に働いてもらうには、どうすればいいですか?」と質問してくださいました。

お話を聞くと、スタッフは数名。
その中には、比較的前向きに動き、自分から取り組んでくれる方もいるとのことでした。

そこでお伝えしたのは、

最初から全員を動かそうとしなくてもいいのではないでしょうか

ということです。

どうしても、新しい取り組みに前向きな人もいれば、なかなか動き出せない人もいます。
もちろん、全員に参加してもらうことは大切です。

ただ、動きにくい人を動かすことだけに多くの時間やエネルギーを使うより、
まずは、すでに「やってみよう」と思っている人と小さく始める。

そこから変化をつくる。
その方が、現場全体へ広がるきっかけになることがあります。

高知県の直販所関係者向け売り場づくり講習会の会場全景
研修では、参加者の皆さんにも自分の現場に置き換えて考えていただきました

まず、自分がやってみせる

研修が終わったあと、このご相談についてもう一度考えていました。
そこで、もう一つ大切だと思ったことがあります。

それは、相談されたご本人が、まずやってみせること。

言葉で、

「もっと主体的に動いてほしい」
「自分から考えてほしい」

と伝えることも必要です。

ただ、それだけではなく、自分自身がまず動いてみる。
そして、前向きなスタッフと一緒に小さな取り組みを始めてみる。

そこで何か変化が生まれたら、それを周囲にも見えるようにする。

すると、

「自分たちにもできそう」
「ちょっとやってみようかな」

という人が少しずつ増えていくかもしれません。

整理すると、

本人がまずやってみせる
→ 前向きな人と小さく試す
→ 小さな成果を周囲に見えるようにする
→ 「自分たちにもできそう」を増やす

という流れです。

全員を一度に変えなくてもいい

現場を変えようとすると、「どうすれば全員が動いてくれるだろう」と考えてしまいます。
けれど、実際の現場では、一斉に全員が変わることの方が少ないのではないでしょうか。

誰か一人が始める。
その人の工夫によって、お客さまの反応が変わる。

商品が動く。仲間から声をかけられる。
そんな小さな手応えが生まれる。

そして、その変化を見た別の人が、「自分もやってみようかな」と思う。
現場は、そんなふうに動き始めることがあります。

私自身、小売店の現場で働いていた頃を振り返っても、大きな改革から変化が始まったというより、
誰かの小さな工夫や、目の前で起きた小さな成功から次の行動につながったことが少なくありませんでした。

研修の成果は「知ったこと」だけではない

今回の研修では、私自身の店舗時代の経験もこれまで以上に多くお話ししました。
理論やノウハウを伝えることも大切です。

一方で、

「自分も同じことで困っている」
「自分の店だったらどうだろう」
「だったら、ここを変えてみようか」

と、自分の仕事と重ねて考えてもらうことも大切だと思っています。

今回、研修終了後にいただいた二つの質問は、まさにその瞬間だったように感じました。

研修を受けたことで、何か一つ知識が増える。
それだけではなく、自分の現場を見直し、次に何を変えるかを考え始める。

そこから初めて、研修が現場につながっていくのかもしれません。

一人の「やってみよう」から、現場は変わり始める

今回質問してくださったお二人とも、「自分の現場をもっと良くしたい」という気持ちが伝わってきました。
その姿勢が、とても印象に残っています。

全員が一度に変わる必要はありません。

まず一人が動く。
小さく試してみる。
そこで生まれた変化を、仲間と共有する。

その積み重ねが、現場全体の変化につながっていく。

私たちはこれからも、研修や現場での対話を通じて、
一人ひとりの「やってみよう」を、小さな実践へつなげることを大切にしていきたいと思います。

※今回実施した高知県での直販所研修の内容については、当社運営サイト:農家クラブでも紹介しています。

ABOUT US
臼井 浩二POPコミュニケーション合同会社 代表
直売所・道の駅・小売店を中心に、商品の魅せ方や売場改善、価値の伝え方を通じて、現場スタッフや生産者が「やってみたい」と動き出す現場づくりを支援しています。 大阪・千里中央の産直店勤務時代には、社員2名・売場30坪で年商1.3億円を達成。現在は全国の自治体・JA・道の駅・直売所・小売チェーンなどで、研修・講演・現場支援を行っています。 臼井浩二のプロフィールを見る →