自己PRシートづくりを通じて見えた、“相手に伝わる価値の見つけ方”

先日、高知県立林業大学校にて
就職ガイダンスに向けた講義を担当しました。

テーマは、学生の皆さんが就職ガイダンスで
企業へ提出する「自己PRシート」の作成です。

自己PRシートと聞くと、

「販促や売場づくりとは関係ないじゃん」
「学生の話でしょ」

と感じるかもしれません。

しかし、講義を終えてあらためて感じたのは、
自己PRも商品PRも、根っこにある考え方は同じ。

自分が言いたいことを一方的に伝えるのではなく、
相手の立場に立って、自分がどう役立てるかを考えること。

この視点です。

自己紹介と自己PRは違う

今回の講義では、
まず「自己紹介」と「自己PR」の違いについて
生徒たちと一緒に考えました。

ちなみに、あなたなら、
自己紹介と自己PRの違いは、何だと考えますか?

…生徒たちに共有したのは、こちらです。

自己紹介は、自分を知ってもらうもの

たとえば、名前、出身地、好きなこと、
自分の性格などを伝えることで、相手との関係の入口をつくります。

一方、

自己PRは、相手の立場に立って、自分がどう役立てるかを伝えるもの

就職ガイダンスであれば、相手は企業です。

企業は、学生の人柄だけでなく、

  • なぜ林業の仕事に関心を持っているのか
  • どんな考え方を持っているのか
  • 現場でどんな役割を担えそうか
  • 周囲と協力して働けそうか
  • 自社の仕事を理解しようとしているか

といったことを見ています。

つまり、自己PRでは、
「自分はこういう人です」だけではなく、
「御社で、こう役に立ちたいです」
という視点が必要になります。

商品紹介と商品PRも同じ

これは、商品やお店の伝え方にも通じます。

商品紹介は、
商品の特徴を説明することです。

たとえば、

  • 高知県産です
  • 手づくりです
  • 無添加です
  • 朝採れです
  • こだわりの製法です

といった情報です。

もちろん、これらも大切な情報です。

ただ、それだけでは
お客さまに伝わりきらないことがあります。

商品PRで大切なのは、

その商品がお客さまにとって、どんな価値があるのかを伝えることです。

お客さまは、商品の特徴そのものではなく、
その商品を買うことで得られる
うれしさ、安心感、便利さ、楽しさ

といった要素に反応するのではないでしょうか。

つまり、商品PRも自己PRと同じで、
「こちらが言いたいこと」だけではなく、
「相手にとって、どんな意味があるのか」
を考える必要があります。

講義で行った3つの視点

今回の講義では、自己PRシートを書く前に、
学生の皆さんに3つの視点で考えてもらいました。

それが、

  1. 相手を知る
  2. 自分を知る
  3. 重なる部分を探す

です。

1. 相手を知る

まず考えるのは、相手です。

就職ガイダンスであれば、相手は企業です。

希望する企業がある学生は、その企業について考えます。

  • どんな仕事をしている会社か
  • どんな人材を求めていそうか
  • どんな課題や困りごとがありそうか
  • これから必要とされそうな力は何か

まだ希望企業が決まっていない学生は、
林業界や現場全体について考えます。

ここで大切なのは、
「自分が何を言いたいか」から始めるのではなく、
「相手は何を知りたいか」から考えることです。

これは販促でも同じです。

商品やお店の価値を伝えるときも、
まず考えるべきはお客さまです。

  • どんな人に届けたいのか
  • その人は何に困っているのか
  • 何を求めているのか
  • どんな場面でその商品が役に立つのか
  • どんな言葉なら関心を持ってもらえるのか

相手が見えていないと、伝える言葉もぼんやりしてしまいます。

2. 自分を知る

次に、自分を知る。

学生の場合は、自分の経験や強みを整理します。

  • これまで頑張ってきたこと
  • 林業大学校で学んできたこと
  • 実習で意識してきたこと
  • 人からよく言われること
  • 自分が大切にしていること

ここで大切なのは、
立派な実績だけを探す必要はないということです。

小さな経験でも、本人らしさが見える材料になります。

商品やお店の場合も同じです。

  • 商品の特徴
  • 生産者や作り手の想い
  • お店が大切にしていること
  • 他店との違い
  • お客さまからよく言われること
  • 手間をかけている部分
  • 続けてきた取り組み

こうしたものが、価値を伝える材料になります。

ただし、ここで注意したいのは、
自分たちの強みだけを並べても、
相手に伝わるとは限らないということです。

大切なのは、次の視点です。

3. 重なる部分を探す

自己PRで大事なのは、

相手が求めていることと、
自分ができること・大切にしていることが重なる部分です。

この重なりが、相手に伝えるべき価値になります。

学生の場合であれば、

  • 企業が求めていること
  • 自分が学んできたこと
  • 自分が大切にしている姿勢
  • 入社後に貢献できそうなこと

この重なりを見つけることで、自己PRの内容が見えてきます。

商品やお店の場合であれば、

  • お客さまが求めていること
  • 商品やお店が持っている特徴
  • 作り手の想いや工夫
  • お客さまの暮らしの中で役立つ場面

この重なりが、販促物や媒体、接客、売場で
伝えるべき価値になります。

たとえば、商品に「手づくり」という特徴があったとします。

でも、お客さまにとって大切なのは、
単に手づくりであることではないかもしれません。

手づくりだから、安心できる。
手づくりだから、贈り物に気持ちが込められる。
手づくりだから、量産品にはない温かみがある。

このように、
お客さまにとっての意味まで考えることで、
伝わる言葉に近づいていきます。

価値は「重なり」から生まれる資料
相手が求めることと自分(自社)が持っているものの重なりが選ばれる理由となる

「私の強みは…」だけでは伝わりにくい

今回の講義では、
学生の皆さんが一生懸命に自己PRシートを作成してくれました。

一方で、講義を終えて感じた課題もありました。

それは、文章の形が少し似てきやすいことです。

たとえば、

「私の強みは、○○です」

という形です。

もちろん、書き始めるための型は大切です。

特に、文章を書くことが苦手な学生にとって、
型があることで手を動かしやすくなります。

ただ、最終的に大切なのは、
型に当てはめることではありません。

大切なのは、その人の経験や考え方が伝わることです。

「私の強みは、丁寧に作業できることです」

と書くよりも、

「実習では、作業前の確認や
周囲への声かけを意識してきました」

と書いた方が、その人の姿が見えやすくなります。

販促でも同じです。

「こだわっています」
「新鮮です」
「おすすめです」

だけでは、なかなか伝わりません。

どんな場面で役立つのか。
なぜおすすめなのか。
誰にとってうれしい商品なのか。
どんな想いや工夫があるのか。

そこまで言葉にしてはじめて、相手に伝わる価値になります。

自己PRも販促も、相手視点から始まる

今回の講義を通じて、あらためて感じたことがあります。

それは、

自己PRも販促も、
相手視点から始まるということです。

自分をよく見せようとするだけでは、
相手には届きにくい。

商品の特徴を並べるだけでも、お客さまには届きにくい。

相手が何を求めているのか。
自分たちは何を持っているのか。
その重なる部分はどこにあるのか。

そこを見つけることで、伝えるべき価値が見えてきます。

価値は、相手との重なりの中で見えてくる

価値は、自分の中だけにあるものではありません。

もちろん、商品やお店、会社には、
それぞれの強みや魅力があります。

でも、それが相手にとって
意味のあるものとして伝わらなければ、
なかなか行動にはつながりません。

大切なのは、
相手が求めていることと、
自分たちが持っているものの重なりを見つけること。

そこに、相手に伝わる価値があります。

今回の講義は、
就職ガイダンスに向けた自己PRシートづくりでした。

しかし、その考え方は、
商品やお店の価値を伝える場面にも応用できます。

自己PRも、商品PRも、売り場づくりも、根っこは同じです。

自分が言いたいことを伝えるのではなく、
相手の立場に立って、
「なぜ、それが相手にとって価値になるのか」
を考えること。

その視点が、伝わる言葉をつくり、
相手が動くきっかけをつくるのだと考えます。

ABOUT US
臼井 浩二POPコミュニケーション合同会社 代表
直売所・道の駅・小売店を中心に、商品の魅せ方や売場改善、価値の伝え方を通じて、現場スタッフや生産者が「やってみたい」と動き出す現場づくりを支援しています。 大阪・千里中央の産直店勤務時代には、社員2名・売場30坪で年商1.3億円を達成。現在は全国の自治体・JA・道の駅・直売所・小売チェーンなどで、研修・講演・現場支援を行っています。 臼井浩二のプロフィールを見る →