「誰に」を決めると、当たり前が価値に変わる|地域おこし協力隊向け「相手を動かす伝え方」研修

地域おこし協力隊向け「相手を動かす伝え方」研修で参加者に問いかける講師

高知県地域おこし協力隊のスキルアップ勉強会で、
「相手を動かす伝え方」をテーマに研修を担当しました。

参加者は、高知県内で活動する
地域おこし協力隊の皆さん34名です。

今回の研修でお伝えしたのは、
目を引くキャッチコピーや、相手を説得するための話し方ではありません。

言葉や見せ方を考える前に、

誰に?
誰に動いてほしいのか

なにを?
その人にとって、どのような価値があるのか

どうやって?
どのようなカタチなら、
価値を実感してもらえるのか

を整理するための、基本的な考え方です。

言葉や見せ方の前に、アイデアの芯をつかむ

研修前の打ち合わせでは、
主催者の方から、参加者の企画や情報発信について、
次のような課題感を伺っていました。

AIを使えば、文章や企画書の形を整えることはできます。

一方で、

  • 誰のための取り組みなのか
  • 相手は何に困り、何を求めているのか
  • 地域や自分の何が役に立つのか
  • 取り組みによって、どのような変化を生みたいのか

といった中身が整理されていなければ、
表面的には整っていても、企画や発信の内容が薄くなってしまいます。

そこで今回は、言葉のテクニックではなく、
企画や発信の土台となる「考える順番」を身につけることを目指しました。

相手を動かす伝え方・3つのステップ

研修では、相手を動かす伝え方を、
次の3つのステップで整理しました。

ホワイトボードを使いながら相手を動かす伝え方を説明する講師
参加者から出た言葉をホワイトボードに拾いながら、「だれに・なにを・どうやって」の順番で整理しました

Step 1 だれに?

最初に考えるのは、
伝える言葉ではなく、動いてほしい相手です。

研修では、すでに動く理由を持っている人を
「腹ペコ客」と表現しました。

腹ペコ客とは、
お金や時間、手間、エネルギーを使ってでも、何かを手に入れたい、
今の状態を変えたいと思っている人です。

商品を買う人だけでなく、

  • 活動に参加したい人
  • 地域に関わりたい人
  • 誰かに相談したい人
  • 協力先を探している人
  • 移住に向けて情報を集めている人

なども含まれます。

Step 2 なにを?

自分が伝えたいことを並べるのではなく、
相手が求めていることに対して、
自分や地域の何が役立つのかを考えます。

相手が求めていること×自分・地域が持っているもの=相手にとっての価値

地域の人にとっては当たり前の風景や日常も、
相手が変われば価値になることがあります。

個性、人柄、経験、知識、地域の人との関係性も、
誰かの役に立つことで強みになります。

Step 3 どうやって?

「どうやって?」というと、
SNSやチラシ、動画などの発信媒体を思い浮かべがちです。

しかし、その前に考えたいのが、
相手に価値を実感してもらうためのカタチです。

商品として提供するのか。
体験やイベントにするのか。
相談会や交流会を開くのか。

価値を実感しやすいカタチを考えたうえで、
腹ペコ客がいる場所、普段見ている媒体、
信頼している人や情報源を探していきます。

研修で使用したスライドとワークシートも、
「だれに・なにを・どうやって」の順番で、
自分の活動を整理できる構成にしました。

34名のうち、多くの方の言葉を拾いながら進行

今回の研修では、
講師が一方的に説明するのではなく、
参加者の皆さんに問いかけながら進めました。

34名のうち、およそ半分以上の方に、
何らかの形で発言や意見共有の機会をつくることができました。

ハンバーガー店を繁盛させるために必要なものは何か。
サプリメントを案内するなら、誰に最初に声をかけるか。
同じレモンでも、女子高校生と80代の男性に伝える内容は同じなのか。

参加者の皆さんから出てきた意見を
ホワイトボードに書き出しながら、考え方を整理していきました。

講師が先に答えを示すのではなく、自分たちの発言を通じて、

相手が変われば、伝える内容も変わる

と実感してもらうことを大切にしました。

自分の伝え方についてグループで話し合う地域おこし協力隊の参加者
自分が誰かに何かを伝えた場面を振り返り、参加者同士で共有しました

「noteで発信しているが、移住者の増加につながるのか」

研修の最後には、一人の方の質問をきっかけに、
4〜5名の方から質問が続きました。

特に印象に残ったのが、
移住促進に取り組んでいる方からの質問です。

その方は、noteを使って地域の情報を発信しているものの、
その活動が移住者を増やすことにつながるのか、
最近、取り組みの方向性について考えているとのことでした。

そこで、私が2011年に起業した当時の経験をお話ししました。

当時は、現在ほどSNSが普及していなかったため、
ブログを使って情報を発信していました。

数あるブログサービスの中で、
私が主に利用していたのはアメーバブログです。

理由は、当時の私にとっての「腹ペコ客」が、
そこに集まっていたからです。

相手を動かす伝え方研修の質疑応答で質問する参加者
最後の質疑応答では、一人の質問をきっかけに、参加者から次々と問いが寄せられました

腹ペコ客と出会える場所は?媒体は?

重要なのは、noteという媒体が良いか悪いかではありません。

  • 移住を検討している人は、noteに集まっているのか?
  • 移住のために時間やエネルギーを使っている人は、どこにいるのか
  • 普段、どこで情報を集めているのか

を確かめることです。

移住相談会や移住フォーラムには、
わざわざ時間をつくり、会場まで足を運んでいる人がいます。

オンライン上にも、移住希望者が集まる
プラットフォームやコミュニティがあるかもしれません。

その場所で直接情報発信することが難しくても、
現在のnoteや取り組みにつなげる方法は考えられます。

まず最初の一歩を踏み出してみる

この話を受けて、質問者の方から、

移住フォーラムに参加している人に、
普段どこで情報を集めているか、直接聞いてみるのはどうでしょうか

というアイデアが出ました。

まさに、次の一歩につながる考え方です。

講師が正解を渡すのではなく、
参加者ご自身が、

まず、腹ペコ客に聞いてみよう

という行動を見つけられたことが、
今回の研修を象徴するやり取りだったように思います。

自治体担当者と熱量が違うのは、ある意味当然

参加者の皆さんのお話をうかがう中で、
地域の自治体担当者とのコミュニケーションに
難しさを感じている方が多いことも印象に残りました。

  • 活動への思いが伝わらない
  • 企画を提案しても話が進まない
  • 自分と担当者との間に熱量の差を感じる
  • どのように伝えれば動いてもらえるのか分からない

地域のために活動しているからこそ、
相手にも同じ熱量で向き合ってほしいと感じるのは
自然なことです。

一方で、日常業務として複数の案件を担当する自治体職員と、
地域の外から入り、一つの活動に力を注ぐ協力隊員では、
立場も見ている景色も異なります。

組織の中では、担当者一人の判断だけで進められないこともあります。

同じ熱量ではないことや、意見がすぐに通らないことを、
相手のやる気の問題だけで捉えないことも大切です。

相手が動きたくなる理由を考える

そのうえで考えたいのは、

「自分と同じ熱量を持ってもらうには、
どのような言葉を使えばよいか」

ではなく、

  • 相手は何を判断材料にしているのか
  • 何が不安なのか
  • どのような条件なら動きやすいのか

という視点です。

自分が言いたいことではなく、
相手が判断し、動ける理由を整える。

今回の「だれに・なにを・どうやって」は、
住民や観光客への情報発信だけでなく、
自治体や地域の関係者と活動を進める際にも使える考え方です。

うまい言葉ではなく、次に考えるための問いを持ち帰る

「相手を動かす伝え方」というタイトルから、
相手を説得する言い回しや、
効果的なキャッチコピーを期待していた方もいたかもしれません。

しかし、どれだけ言葉を整えても、
相手が求めていることや、動けない理由が分からなければ、
伝え方だけで状況を変えることは難しいと考えています。

今回、参加者の皆さんに持ち帰っていただきたかったのは、
すぐに使える決まった言葉ではありません。

誰に動いてほしいのか
その人は何を求めているのか
自分や地域の何が役に立つのか
どのようなカタチで、どこに届けるのか

と、自分の活動を見直すための問いです。

研修の冒頭に掲げた目標は、
モヤモヤを整理し、一歩を踏み出せる状態へ
でした。

最後の質疑応答で、参加者自身から
「まず、対象となる人に聞いてみる」という一歩が出てきたことに、
今回の研修の手応えを感じました。

アンケートから見えた、参加者の気づき

研修後のアンケートでは、
「誰に伝えるのかを考える大切さ」や、
発信手段を選ぶ前に、相手と価値を整理する必要性について、

多くの感想をいただきました。

参加者の声

今までSNSを使った発信方法のセミナーが多かったのですが、その前の考え方の部分を教えてもらえて、今後の活動に活かせそうです。

参加者の声

「誰に」を考えることの大切さがよく分かりました。

今まで情報発信するための手段のことばかり考えていましたが、先にゴールを明確にして、そのための手段を考える必要があることが分かりました。

普段、自分の活動地域でディスカッションする機会があまりないので、自分では考えつかないようなアイデアを聞くことができました。

※参加者アンケートより、個人が特定されない形で一部を抜粋・編集して掲載しています。

今回、参加者の皆さんの発言を
できるだけ拾いながら進めたことで、
一人で考えるだけでは見えなかった視点にも触れていただけたようです。

研修・講演をご検討中の方へ

当社、POPコミュニケーション合同会社では、

目を引く言葉や表面的な手法をお伝えするだけでなく、
参加者一人ひとりが自分の活動や現場に置き換え、
最初の一歩を踏み出せる研修を大切にしています。

自治体・商工団体・地域事業者、小売企業、直売所・道の駅、JAなど、
対象者や目的、現場の課題に合わせて、
研修内容やワークを組み立てます。

まだテーマや内容が固まっていない段階でも、
現在感じている課題を伺いながら、一緒に整理いたします。

ABOUT US
臼井 浩二POPコミュニケーション合同会社 代表
直売所・道の駅・小売店を中心に、商品の魅せ方や売場改善、価値の伝え方を通じて、現場スタッフや生産者が「やってみたい」と動き出す現場づくりを支援しています。 大阪・千里中央の産直店勤務時代には、社員2名・売場30坪で年商1.3億円を達成。現在は全国の自治体・JA・道の駅・直売所・小売チェーンなどで、研修・講演・現場支援を行っています。 臼井浩二のプロフィールを見る →