30歳の頃に働いていた産直店での話です。
大阪の千里中央にあった、
社員2名、売場面積30坪の小さなお店です。
現場は私たちに任せてもらい
月に1回の営業会議で
社長や取締役と話をしていました。
その際に社長から言われ
今でも忘れない言葉があります。
15年以上経っても忘れず
心に残っているということは、
よっぽど衝撃だったのだと思います。
以前少しお話ししたように
当時のお店は、高知県の生産者さんから
届く農産物が看板商品でした。
平均月商は、約1千万。
その4割前後の売上を
野菜や果物が占めていました。
言ってみれば、この青果部門が
お店の状況を作り上げている。
青果の売上が落ちれば
お店全体の業績も下がる。
来店客数も落ちる。
そんな状況でした。
ちなみに青果部門って面白くって。
『利益率』を比較的自由に
コントロールできるんです。
野菜にしても果物にしても
基本、定価はありません。
値付けは、お店の自由です。
例えば、キャベツ1玉を
70円で仕入れたとしたら、
それを100円で売ってもいいし、
ライバル店の価格を見ながら
80円で売ってもいいわけです。
キャベツに限らず
その他の野菜や果物も同じように
値付けが自由。
カンタンに言えば値付け次第で、
「このお店の野菜高いよね」
「あのお店って、野菜安いわよ」
お客さまの評価が180度
一変するわけです。
ちなみに当時、社長から言われていた
青果部門の『理想の利益率』がありました。
「これくらいの利益率に
おさまっていたら健全だよ」
という数字です。
野菜は20~23%。
果物は35%前後。
※果物は利益率をとれるんです
しかし、ある時期
この利益率がおかしなことになりました。
野菜の利益率が30%近くになったんです。
値付けは全部、自分がさせて
もらっていたのですが、
元来もうけるのが大好きだったのか?
これチャンス(安い仕入れ)だな
と感じたら、
ガンガン利益を乗っけて
価格をつけていたんです。
野菜は売れ残りによる
廃棄ロスがありますし、
「いい商品は、利益をとりたい」
そんな思いもありました。
結果、ひと月が終わってみると
野菜の利益率が業界の標準より
エラく高くなっていたのです。
その数字を見つけた
社長から、こう言われました。
「お客さん離れるで」
集客商品である野菜の値段が
高すぎると、お店の一番の魅力が失われる。
お客さんが他店へ去って行くで。
「あー、そうなんか」
当時は感じていました。
ただ今は少し違う感じ方もしています。
まず、当時のお店で扱っていた
生産者さん直送の農産物は
他店にはない強い商品でした。
それら商品を集客商品として
低価格で販売するのか?
あるいは、
他にない強い商品なので
そこでしっかり利益をつかむのか?
2通りの考え方があります。
勿論、供給できる量の多い少ないで
作戦も変わります。
どっちが正解か?
結果や数字がすべてです。
そんなことを踏まえて今感じるのは、
- 業界の常識
- 時代の流行り
- 他店がやっていること
それらが全て正しいわけじゃなく
自社や自分に適したやり方を見極め
数字の出るやり方を徹底する。
当然ながらお店や会社によって、
- 持っている資源
- お付き合いするお客さま
- 得意分野
違うと思います。
それらを勘案した上で
自分の道をブレずに自信を持って取り組んでいく。
当たり前の話なのですが、今みたいに
価値観が多様化し情報が溢れる中
よけいに大切じゃないでしょうか?
『常識のうえの非常識』
尊敬する方から教わった言葉の1つです、
基本を知った上で、あえて外す。
これを書きながら
さらに強く感じました。